Chapter 6 子宮頚がん-扁平上皮がんの治療-
- Section1 がんの進行度と手術の方法
- Section2 手術に際しての注意点
- Section3 リンパ腺の摘出
- Section4 放射線治療
- Section5 抗がん剤治療
■がんの進行度と手術の方法
がんの進行度と手術の方法をまとめてみると、大たいは次のような手術方法をすすめられる事が多いようです。
異形成上皮 (軽度中等度) | 経過観察の方が多いのですが、自然に消えない方は円錐切除をすすめられる方もいます。 |
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異形成上皮 (高度) | 円錐切除をすすめられる時があります。 |
0期 | 円錐切除 / 単純子宮全摘術(腹式 膣式) |
Ⅰa1期 | 円錐切除 |
単純子宮全摘術(腹式 膣式) | |
Ⅰa2期 | 単純子宮全摘術(腹式 膣式) |
準広汎子宮全摘 | |
Ⅰb期以降 | 広汎子宮全摘術 |
Ⅲ期以上 | 広汎子宮全摘術 / その他の手術(放射線、抗がん剤を一緒に使うことがあります。) |
■手術による方法
実際の手術の方法を説明しましょう。
手術には幾つかの方法があります。
病変部を含めて円錐状に子宮の出口のみを切り取る方法です。
これは将来赤ちゃんを生むことが出来る可能性があります。
コルドナイフ法、リープ法、レーザメス法があります。
子宮本体に沿って子宮を切除する方法です。基本的には良性腫瘍である子宮筋腫の手術と同じです。膣の部分の切除も少なくてすみます。
卵巣は他に異常がなければ手術をしないのが普通です。
単純子宮全摘術と広汎子宮全摘術の間の手術といって良いでしょう。
癌を確実にとり切ることと、副作用を少なくすることを目的にするものです。しかし癌が広がっていると考えられる状態ではすすめられません。
癌が子宮の外に広がっていると判断された時、あるいはその可能性があると判断された時は、子宮をその周囲を含めて広く切除しなければいけない時があります。手術の範囲が広くなる分手術後の副作用(大ていは少し時間が経つと克服出来ます)が出ることがあります。
その効果と手術後の副作用については主治医とよく相談しましょう。
■手術に際しての注意点
1、上に書いてあるがんの進行度と手術の方法は1つの目安です。手術方法の決定には進行度の他に年令や合併症の有無を含めて沢山の条件を考慮に入れて、その方の最適の
治療法がすすめられるのが普通です。また今後赤ちゃんを希望されるか、現在妊娠されているかも大事な要素になります。
2、手術の前に放射線治療を行ったり(術前照射といいます)、抗癌剤の注射(主に動注と言って動脈に抗癌剤を入れます)をすすめられる事があります。特に進行度が進んだ方は抗癌剤を注射した方が手術後の治療効果が高いのではと考えられてきています。
3、手術については、他に年齢や合併症の有無など、医師との相談が必要になります。
また組織検査の上、リンパ管や血管に癌細胞が入っているか、癌の広がりはどうか等が重要な判断基準になります。
■リンパ腺の摘出
①がんが上皮内癌(0期)の状態をこえるとリンパ腺に転移する可能性が出てきます。
②リンパ腺の転移の確率については(2)がんであれば、どの程度進行しているかを調べる検査の項目をご覧下さい。
③この際リンパ腺に転移がおこっているか否か検査をすすめられる事があります。
④ある程度進行していると判断された場合、リンパ腺を手術で摘出したり、放射線治療をうけるなどの処置をすすめられる場合があります。
⑤リンパ腺の処置のうち手術で摘出するのは、子宮の手術と一緒に行われる事が普通ですが、子宮の手術を行った後、とられたがん組織を詳しく調べた後リンパ腺の摘出を改めてすすめられる事もあります。
⑥リンパ腺の手術は腹腔鏡下で行われる事もあります。
⑦リンパ腺摘出後の副作用について
・手術後比較的早い時期から出たり時間がたってから出る事があります。
・主な症状は下肢のむくみですが足全体が太くなったり感染をおこし熱が出る事があります。
・お腹に症状が出る時もあります。
・痛みや歩行の困難をおこす事がありますので医師と相談しましょう。
・感染がある時は抗生物質を用います。むくみはその程度によりいろいろな治療法が考えられています。
■放射線治療
子宮がんの治療に対する放射線治療の効果は最近十分満足すべき結果が出ています。
以前は放射線治療というと、手術の出来ない程進行した方、高齢者や合併症がある為手術が不可能な方が治療対象だった時もありました。また放射線治療の副作用もかなりの程度があり、皮膚のやけどや腸の障害なども問題になることがありました。しかし最近はがんの部分のみを適切に治療し、健康な部分に対する副作用を少なくすることが出来るようになり治療率は、とても高くなっています。
■抗がん剤治療
進行度が進み手術の対象にならなくなったり、放射線のあたる部分以上まで広がった人に用います。また再発した人でも抗がん剤治療、あるいは抗がん剤+放射線治療は完全に治療したと判断できる人も出る程で、明らかに効果的な治療法であると考えられるようになってきました。また最近の抗がん剤の使い方として、手術の前に抗癌剤を用いて癌細胞を弱らせてから手術を行う事も多くなりました。その方が手術後の経過が良いという研究があります。