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月経不順は代表的症状です
月経不順を訴えられて来られる方にPCO(多のう胞性卵巣症候群)という病気にかかっていると考えられる方がおられます。ここではそのお話を致しましょう。
PCO(多のう胞性卵巣症候群)という病気は、聞きなれない方が多いと思いますが、意外と多い病気です。月経不順で悩んでいる人のうち、約20%がこの病気の可能性があると考えられています。
この病気の原因はまだわかっていませんが、病状は比較的はっきりしています。無月経や稀発月経(まれにしか月経がおこらない)などの月経不順が、まず代表的な症状です。婦人科で超音波検査を受けると、卵巣の中の小さな袋(のう胞)がたくさん認められ、血液検査では脳下垂体というところからでるLH(黄体形成ホルモン)というホルモンの値が高くなります。
一方、目に見える症状として肥満、ニキビ、多毛といった、男性ホルモンがはたらきすぎたためにおこる症状もあります。また、不妊との関係も指摘されています。
ただ、日本人には肥満やニキビ、多毛などの症状がでるタイプは比較的少ないといわれています。もし今ご相談の方にこれらの症状がでていないのであれば、今後きちんとした治療を受けることで、そうした症状を防ぐのは可能だと考えられます。
治療については、赤ちゃんが欲しいという方とそうでない方とで差があります。PCOのために排卵がおこりにくく、赤ちゃんがなかなかできないという相談を受けることが多いので、そちらのほうから先にお話ししましょう。
治療法として(1)第一選択は排卵誘発剤です。クロミフェン(クロミッド)というくすりを用いますが、幸いこのくすりで高い排卵率が得られます(60%)。これで排卵がおこらないときは、排卵誘発剤の量 を増やしたり、血液中のホルモンの量を調べながらほかのホルモン剤を一緒に使ったりします。
それでも排卵がおこらないときは、(2)排卵誘発の注射を用いたり、(3)卵巣を電気メスやレーザーなどで切開する外科的な治療法もあります。しかし(2)と(3)はその効果 と副作用について医師と十分に相談することが大切です。
次に赤ちゃんを望まれていない方についてですが、この場合は、排卵誘発剤を積極的に使うのをおすすめしないこともあります。しかし、ホルモン剤(おもに女性ホルモン剤)を用いて、ある程度周期的に月経をおこさせることは大切です。くすりの副作用を感じるときは、ホルモンの種類や量 を調節してもらうことも可能です。
自然な妊娠を望まれる方へ
卵管がつまっているために妊娠出来ない方は、最近体外受精を選択される方が多いのですが、卵管を正常の状態に直して自然の形で妊娠されたいという方も多く、そういう方のために幾つかの治療法が考えられております。
今のところ卵管がつまっている方(卵管閉塞症)の治療法にはいくつかの方法が考えられております。
(1) 検査をかねた方法ですが、卵管造影法(卵管のレントゲン撮影)、卵管通 気法(卵管内にガスを送る)あるいは卵管通水法(卵管内に水を送る)などが最初に行われるのが普通 です。
(2) お腹をあけて開腹手術(ミニラパといいます)、あるいは腹腔鏡下手術を行うことがあります。
(3) X線で観察しながら卵管内にチューブを入れて卵管を広げる方法があります。
(4) 子宮鏡を入れて子宮の内をみながら卵管の入り口をみつけ(子宮卵管口)ここからカテーテルといった細い管を入れます。この状態で水を入れて卵管の通 りをみます。同時に卵管が狭い時はこれを広げることが出来ます。これを子宮鏡下選択的卵管通 水法といいます。
(5) この他最近効果が比較的高く、注目をあびているのが卵管鏡下卵管形成術(FT法)です。
これは卵管の中に直接チューブを入れて卵管内につまっている部、狭くなっている部分をバルーンという風船の様なもので開く方法です。図のように狭くなっている部分にバルーンをあて、このバルーンをすすめる事で卵管の狭窄部を広げていく方法です。
この時は腹腔鏡を用いてお腹の中をみながら行う方法と、腹腔鏡を用いないでやる方法があります。
より生理的な状態に近い胚移植を
体外受精胚移植では通常採卵した後2日~3日目に子宮内に受精卵を移植します。しかし体外での胚の培養を数日延ばして、胚盤胞の時期になった時に移植する方法が最近行われるようになってきました。 元々卵管内で受精したあとは、胚盤胞の時期に子宮内に入ってくるので、この時期に胚移植を行う方がより生理的な状態に近いと言えます。
ただ今のところでは、胚をこの時期まで順調に成育される事にむずかしい時もあり、全てこの時期に胚移植を行うという所に至っておりません。
胚の培養方法を含めてまだいろいろ研究がなされている所です。

琴似産科婦人科クリニック 酒井 潔
まず患者さんをご紹介いたします。
年齢 56歳 職業 なし、家庭の主婦
「どういうことで、病院へ来ましたか」という質問にたいして、「昨日、トイレでテッシュに血が付いているのに気付き、心配で病院に来ました」ということでした。
出血の量は多くはないが、赤い血はテイッシュについていたそうです。詳しく聞いてみると、さらに、1か月くらい前より、黄色っぽいおりものが増えて、不愉快な臭いがあるのに気付いておりました。
それから、膣の周りに、しょっちゅう、痒みがあり、時にはヒリヒリした痛みを感ずることもありました。 ここ数年、子宮癌の検診は受けてなかったそうです。
閉経は49歳でした。つまり、生理がなくなってから7年を経過しております。
子供は2人、ご主人は健康です。
そこで、子宮癌の検査を含め、診察することにしました。
内診しようとすると、膣は狭くて、内診する指が1本しか入りません。普通は、人差し指と中指の2本の指が挿入可能ですが、この方のように、閉経後7年もたつと、萎縮して、狭くなる人もおります。そこで、人差し指1本で内診を進めましたが、子宮は正常の大きさ、両方の卵巣も特に大きくはなく、子宮と卵巣はともに内診上は、異常なしと思われました。
つぎに、膣鏡といってアヒルのくちばしのような形をした器械で、膣を開き、観察してみました。すると、膣壁つまり膣の壁を構成する膣の粘膜は点々と内出血があり、子宮の入り口にも粘膜からの出血が認められました。そこで、子宮の入り口から細胞をとり、子宮癌の検診を行いました。
また、女性ホルモンの不足がうかがわれるので、血液中の女性ホルモン、エストラジオールを測定しました。
このような状況から、臨床診断は萎縮性膣炎としました。
この萎縮性膣炎というのは、どうして起こるのかと言いますと、原因は、一口でいえば、女性ホルモンの不足によるものであります。そこで治療は、不足しているホルモンを補うために、ホルモン補充療法を行いました。今回はホルモン剤を含んだ膣錠を膣のなかに挿入し、口からもホルモンの錠剤を飲んでもらうことにしました。この膣錠の挿入とホルモン剤の飲み薬の2本立てで、しばらく通院してもらうことにしました。
1週間後にわかりましたが、子宮癌検診の結果はガン細胞は出ていませんでしたが、萎縮性の細胞が認められ、やはり、萎縮性膣炎という診断でした。
血液中のホルモン検査ではエストラジオールの値が普通は30pg以上あるべきところ、10pg以下という結果で、かなりの女性ホルモンの不足が目立ちました。
ホルモン補充療法として、エストリオールの膣錠と飲み薬で治療を行っておりました。数回の洗浄で、膣からの出血はおさまり、外陰部のかゆみ、ヒリヒリ感も改善してきました。
ところが、2回目の洗浄の時、前回は言ってなかったが、「実は、性生活がつらいのです」と。「痛くて性交がスムーズにできない。夫には悪いが最近は断っているのです。どうにかならないでしょうか」ということでありました。
これも、萎縮性膣炎のひとつの症状で、とりあえず、潤滑剤として、KYゼリーを1本あげまして、性交の直前これを、局部に塗って下さい、それから、膣錠と飲み薬を続けることによって、性交の苦痛も和らぐでしょうとお話ししました。
本日は、そういうわけで、加齢と外性器の変化というテーマに沿って、萎縮性膣炎をとりあげてみました。
原因と症状
まず、萎縮性膣炎がどうして起こるかと言うところからお話ししようと思います。 根本的な原因は女性ホルモンの不足です。
日本人の場合、女性の閉経年齢、生理が止まる年齢は、平均50歳といわれております。生理が始まる年齢は昔に比べて若干早くなる傾向にあります。しかし、閉経年齢は、ほとんど、時代によって変化なく、この100年間くらい、いつも50歳前後でした。
卵巣には2つの働きがあって、1つは卵を作って毎月1個ずつ排卵させる働き、もう一つは、女性ホルモンを作って血液中に分泌する働きがあります。この2つの働きは、歯車の両輪のように、一方がダメになると、もう一方もダメになります。つまり、排卵がなくなると、ホルモンの作られ方も悪くなる。
閉経するということは、卵巣が働かなくなって、排卵がなくなるわけですが、同時にホルモンの働きも悪くなる。
排卵は、あるか、ないかで、いわゆるオール オア ノンで、なくなったら、全くありません。それに比べて、ホルモンの方は、排卵がなくなったらといって、ピタッとゼロになるわけではありません。
確かに、閉経に伴って、女性ホルモンを作る場所は、主に卵巣ですがそのほかに副腎というところがあります。また、少量ですが、脂肪組織でも女性ホルモンは作られます。そして、閉経後の女性ホルモンの価は、非常に個人差のあることが知られています。
つぎに女性ホルモンのはたらきについて述べてみます。
今回のテーマにある膣に対する作用としては、女性ホルモンは膣粘膜を厚く、丈夫にする。だから、閉経になって、女性ホルモンが不足すると、膣の粘膜が薄くなって、弱くなる。膣のひだひだがなくなって、のびが悪くなる。そして、ときには、あまりにも薄くなって、毛細血管から出血が起こる。膣の粘膜の下に出血が起こる。粘膜下出血です。点々と霜降り状に出血のあとが見られる。また、そういうときに内診とか、性交などの機械的な刺激が加わると、容易に粘膜が傷付いて出血する。ときには今回のようになんら原因がなくてもある日突然に出血することもある。
そればかりではありません。膣に潤いがなくなる。膣の分泌物が減って、乾いた状態になる。従って、内診の時に指が入りにくく、普通は2本は入るべきところ、1本しか入らない。性交の時、なかなか濡れてこない。ペニスが入らなくて、無理に入れようとすると、痛い。というようなことがあります。 そうなると、膣の粘膜が薄くなった上に乾いた状態になると、ちょっとした刺激でひりひりした痛みを感ずることがある。またときには、痒みが発生する。その痒みもなかなか頑固で、夜も昼も悩まされることになります。
第2に、膣に住む細菌に対するに女性ホルモンの作用です。
膣の中は、全く細菌のいない無菌状態ではありません。
大腸の中に大腸菌がいるように、膣の中には乳酸桿菌、発見した人の名前を取って、デーデルラインの桿菌ともいいます。
この乳酸桿菌は膣粘膜のグリコーゲンを分解して乳酸にし、その分解のエネルギーで生活し、繁殖しています。この乳酸桿菌がたくさんいると、乳酸がたくさんでてきます。乳酸は名の通り酸ですから、酸っぱい。健康な女性のおりものは酸性で、すっぱい臭いがします。膣の中が酸性ですと、ばい菌の繁殖に不適当で、乳酸桿菌以外の菌は皆死んでしまう。外から来たばい菌は繁殖できない。これが膣の清潔な状態で、酸っぱい臭いは、これはおりものが健康であることの証拠です。
女性ホルモンが不足すると、膣の粘膜は萎縮して、細胞に含まれているグリコーゲンは少なくなります。そうすると、それを栄養源にして生きている乳酸桿菌は住み難くなって減少してしまう。そうすると、膣内の酸度が下がって中性とか、アルカリ性になってしまう。その結果、雑菌、例えば大腸菌、ブドウ球菌連鎖球菌などのばい菌が繁殖し、黄色い膿の様なおりものが増え、臭いも不愉快な臭いに変わります。膣に炎症が起こるわけです。その刺激で、痒みが出たり、ヒリヒリ痛みがでたりする。これが、萎縮性膣炎といわれるものの実体です。
治療
治療の基本は不足している女性ホルモンを補うことであります。
これを、ホルモン補充療法といっています。
では、どういうふうにして不足しているホルモンを補うのかという問題ですが、一番普通のやり方は、口から飲む方法です。少量の女性ホルモンの錠剤を毎日飲む。 これには、現在2種類あって、作用の比較的弱いエストリオールという製剤と、もう少し作用の強いプレマリンという製剤があります。
また、月経の終わってしまった婦人がこれらの薬を飲み続けていると、ホルモンの作用で生理のような出血を見ることがあります。そういう場合は、同時に黄体ホルモンを一緒に飲むことによって不愉快な出血を防ぐことができます。
最近、新しいタイプのホルモン剤として、皮膚に貼って効く女性ホルモンというのが人気があります。直系2cm位の、軟らかい円盤状のフィルムですが、これをおなかとか腰に1日おきに張り替える。口から飲む場合には、胃腸障害を起こす人がいる。肝臓に負担がかかる。あるいは消化、吸収などでロスがある。それに対して、貼り薬は、直接皮膚から血管に吸収されるから、胃や肝臓に負担がかからない。薬が消化、吸収で効力が失われることはない、などの利点がある。
それからもう一つ、膣錠です。エストリオールを錠剤として、直接膣のなかに入れてあげる。今回のような萎縮性膣炎にはよく効きます。しかし、毎日とは言わないまでも、1週間に1~2回は、膣洗浄に通わなければならない、というわずらわしさがある。
こういう治療を続ける事により、膣の粘膜は厚くなり、細胞のグリコーゲンは増え、乾燥していた膣の壁は潤いを取り戻します。その結果、膣内は酸性を取り戻し、乳酸桿菌も増え、清潔になります。性交時の痛みも和らぎ、めでたしめでたしということになるわけです。
ここで、問題はこのホルモン療法をいつまで続けるべきかということです。
もともとからだのなかで作られるホルモンが不足して起こる症状ですから、外からホルモンを補充しなければ、一時的にはよくなっても、治療を止めれば、元の木阿弥で、症状は再発します。それですから、このホルモン補充療法はかなり長期間続けることになります。その場合の心配は、長い間ホルモン剤を使って副作用はないかということです。この点については、アメリカ、ヨーロッパが先進国で、20年以上前から積極的に、中高年女性に対するホルモン補充療法が行われ、膨大なデータが集まっています。それによりますと、子宮頚癌については、ホルモン補充療法をしている人と、していない人との間には発生率に差はないといわれております。乳ガンと子宮体癌では、女性ホルモン単独では、やや発生率が増える傾向にある。しかし、これに黄体ホルモンを同時に使用した場合では、逆に癌の発生率は下がったと言われております。黄体ホルモンには発ガンを抑える働きがあるわけです。
ホルモン補充療法には、萎縮性膣炎の治療に効果があるばかりでなく、もっと他にもすぐれた点があります。その2、3をあげてみますと、
第1、ホルモン補充療法を続けることにより、骨粗鬆症を予防します。
女性は更年期を境に、骨のカルシウムが急激に減少し、骨が弱くなります。この原因は、血液中の女性ホルモンが減少するからです。女性ホルモンを補うことにより、カルシウムの減少を抑えることができるのです。
第2に、女性ホルモンは、コレステロールの増加を防ぎます。閉経後、コレステロールの増加に悩まされている女性はたくさんいますが、補充療法を行うことにより、コレステロールをさげ、ひいては動脈硬化、脳卒中を予防することになります。いわゆる、生活習慣病の予防に役立つわけです。
3、これは、最近の研究ですが、ホルモン補充療法が、女性のアルツハイマー病に効果のあることがわかってきました。これは、京都府立大学の本庄教授らの発表ですが、アルツハイマーの患者さんに、女性ホルモンを継続して飲ませると、物忘れが改善し、計算力が増し、情緒も安定するそうです。
話は、萎縮性膣炎に戻りますが、一般に炎症があると痛みとともに機能障害が起こります。働きが悪くなるわけです。例えば、腸に炎症があると腹痛に伴って 下痢をします。膣に炎症があれば、痛みとともに機能障害として、性交痛、性交困難症が出てきます。
たとえ炎症に至らなくても、更年期になって生理が止まりますと、卵巣からのホルモンの分泌が少なくなり、膣粘膜が薄くなり、分泌物も少なくなって、性交痛、性交困難症が発生します。
そこで、萎縮性膣炎に伴う、さらにひろく更年期に伴う、性交痛、ないしは性交困難症についてお話を進めてみたいと思います。
この発生のメカニズムについては、さきほど申しましたように、女性ホルモンの不足によって、膣の粘膜が薄くなることと、潤いがなくなって乾燥気味になることがあげられます。
この性交痛がどれくらいの頻度で発生するかということについては、山形大学の廣井教授の調査をご紹介したいと思います。これは311名の婦人を対象にしたアンケート調査ですが、性交時に痛みを感ずる人の数は、40歳未満では、ほとんどの女性は痛みを感じませんが、50歳以上では、43%の人が痛みを感じます。60歳以上ではじつに90%の人が、性交時痛みを訴えています。これは大変な数だと思います。もし、これが本当だとすると、医者の前で、性交痛を訴える患者さんはそんなにおりませんから、大部分の人は、黙って我慢しているのではないかと思います。しかし、楽しかるべき、性生活が苦痛に変わるということは、QOL quality of life いわゆる、生活の質の向上、という観点から見れば、明らかに、生活の質の低下につながるものだと思います。
年齢を重ねるに従って、性的欲求、性的行動は低下します。 しかし、その低下の仕方には個人差があって一様ではありません。夫婦ともに、同じレベルであれば、たとえセックスレスでもお互いに不満はないわけで、これはこれで問題ないと思います。一方、中高年でも、活発に夫婦生活を営まれている方もおられます。これもお互い満足されているので問題ありません。
問題は、やはり、夫婦間にアンバランスのある場合で、その一つは、今回の症状のように、男性の欲求に女性が答えられないといった場合です。こういうケースにホルモン補充療法を行うことにより、乾燥した膣に潤いを与え、膣の壁を厚く丈夫にし、よりスムーズな性生活を送ることができます。 また分泌物が不足の場合は、ゼリーを使って補う方法もあります。
これと、逆の場合もあります。女性の欲求に男性が答えられない場合です。東邦大学の調査では、日本人男性のインポテンツの割合は、40歳台で20%、50歳台で40%、60歳台で60%と報告されております。最近、バイアグラという薬が発売されました。この薬は、性的不能の男性を回復させるという作用があり、中高年の男性に大いに希望を持たせる薬であります。しかし、考えてみればこういう男性のパートナーは女性であり、その恩恵を受けるのもじつは女性ではないか、とも考えられます。同じ東邦大学の泌尿器科では、夫がバイアグラを飲むことに同意した女性17組について調査しました。17組のうち11組が継続して薬を飲みたいと答えております。5組はどちらでもよい。そして、薬を飲むのは止めてほしいと言ったのはたった1組だけでした。バイアグラは男性だけに役立っているのではなく、男性を通してパートナーの女性にも恩恵を与えていることになります。
今や女性の平均寿命は80歳を超えました。閉経を50歳としますと、その後約30年間生きることになります。30年と言いますと、20歳で成人式を終えた若者が50歳の更年期を迎えるまでの長さです。この30年間をいかに生き甲斐のあるものにするかが課題であります。健康に健やかに生きると言った場合、性の問題も決して無視できないと思います。夫婦間の性生活にアンバランスの生じた場合は、日常生活その他の面でもしっくりいかないことが多いのではないでしょうか。
ホルモン補充療法や、バイアグラを上手に使うことは、性生活上のミスマッチを解決する一つの手段になるかと思います。いわゆるクオリティー・オブ・ライフ、生活の質の向上にこのような薬が役に立つのではないでしょうか。アメリカやヨーロッパでは、20年くらい前から、ホルモン補充療法が広く行われ、今では更年期にはいった女性の15ないし20%が常用しているといわれます。それに対して、日本ではここ数年やっと使われはじめましたが、まだ、更年期女性の1~2%程度の普及率です。はたして、日本でホルモン補充療法が欧米並みに普及するかどうか、私は注目して見ていきたいと思っております。
慶応112年 三田会会報 第4号
今日は更年期障害のお話をしましょう。更年期障害は文字通り更年期に起るさまざまな身体的、精神的異常を言います。これは50才近くになるとそれ迄出ていた卵巣ホルモンが急激に減る為に、卵巣に対して命令を出す脳の中枢ホルモン(ゴナドトロピンと言います)が急に増加する為に起る症状と考えられています。しかしこれは必ずしも女性特有の病気ではありません。男性にも立派に起り得る病気なのです。
最近朝になると後頭部が痛かったり、肩こりが気になったりしませんか。人と大事な話をしている最中上半身がカーっとなる一方で冷汗が出たり、今日は朝から仕事をしたくないなぁと思った事はありませんか。これらは女性の更年期障害に実によく似た症状なのです。 男性に更年期障害があると言われると「本当?」と思ってしまいますが,医学的にも理屈のある事なのです。少し専門的になりますが、その理屈(由)とは男性でも女性ほどではありませんが更年期になると性ホルモンが減少して、前途のゴナドトロピンが増加してきます。これが原因となる可能性があります。また更年期障害と言っても、女性ホルモンが関与しているのはそのうち45%位で、他はどうも精神的な背景が原因となっているのではないかと考えられている事も理由として挙げられます。
従って何かストレスになる様な背景があれば、男性でも女性と同じような症状が出ても不思議ではないという事になります。会社のトップであれば会社の将来が気になる、中間管理職であれば上にも下にも気をつかう、嫁さんには冷たくあしらわれる、子供達には相手にされない、となれば症状が出てもおかしくはありません。全く困った年代と言うものです。 ではこれを克服するにはどうすれば良いか、ポイントを幾つか挙げておきましょう。
1. まず良い医者と出合う事、良い医者の手持ちのカードがなければ良い医者を紹介してもらうルートを持つ事。
2. 良い相談相手を持つ事。
3. 散歩、太極拳、ヨーガ等運動は可。
4. 何と言っても十分休むこと。週休3日を目指せば2日位休めるかも知れない。私達中年世代こそ人生を旅に使っても良いのでは。
薬事日報社
1 はじめに
貧血は日常よく見かけられる疾患ですが、それを引き起こした病気の原因や貧血の際の赤血球の形の違いなどから、普通いくつかの種類に分類されます。その中で多いのは、やはり血液中の鉄分が不足して起こる鉄欠乏性貧血で、貧血全体の60~70%を占めると言われています。また、この鉄血欠乏性貧血の約80%が女性に認められると言われています。ここでは、私のクリニックでの症例を中心にお話しします。話の順序として、最初に貧血の診断基準について、2番目に貧血と患者さんの年齢との関係について、3番目は男性に比べて女性に貧血が多いのはなぜかということについて、4番目に貧血の原因についてお話しします。そして最後に治療と生活指導について論じることにします。
2 貧血の診断基準
まず貧血の診断基準についてですが、これにはいろいろな基準があります。しかしヘモグロビン濃度を基準とするのが普通で、WHO基準では、成人の男性でヘモグロビン13g/dl以上、女性で12g/dl以上、妊婦では11g/dl以上が正常値とされています。妊婦のヘモグロビンの正常値が妊娠していない女性に比べて低いのは、妊娠中血液が薄くなるのが生理的な状態だからです。それはどういうことかと言うと、妊娠中は全体の血液量は増加するのですが、その際、赤血球の数の増加より水分である血漿量の増加のほうが多いために見かけ上ヘモグロビン濃度が低くなるからです。したがって妊娠中の貧血症状については、本当は思ったより貧血ではないこともあるということに注意をはらう必要があります。
3 貧血の年齢との関係
次に貧血と患者さんとの年齢の関係についてお話しします。私のクリニックでは平成6年1月から12月までの1年間で、妊娠している人を除いて、ヘモグロビンが11g/dl以下であった人は124人いました。その人たちを10歳ごとに区切ると、20歳以下では3人、20歳代で14人、30歳代で27人、40歳代では67人と、年齢が増すにつれて貧血の人が増えてきました。しかし、逆に50歳代になりますと貧血の人は11人に減り、60歳以上では2人になっています。
このように、だんだん年齢が上がってくるとともに貧血患者はその数を増し、40歳代でピークとなるのがわかります。ところが、この貧血患者の数は50歳代になると40歳代の6分の1へと激減しています。これはなぜでしょうか。最大の理由は月経にあります。50歳を過ぎると月経がなくなり、出血の危険にさらされる人の数が減るからです。もう一つの理由は、40歳代に多く認められる出血を伴う病気のためと考えられます。このことについては後でまた改めてお話しします。
4 貧血の男女差
次に貧血の男女差についてお話しします。前にも述べましたように、貧血の中でもっとも多い鉄欠乏性貧血の患者さんの80%は女性と言われています。ではなぜ女性に貧血が多いのでしょうか。
ひとつには月経のためと考えられます。女性は1回の月経周期で約30~60ccの出血をしますが、これは鉄に換算すると15~30mgの喪失を意味します。成人男子の1日の鉄喪失量が約1mgですから、この出血の程度がどれほど多いか理解できると思います。また妊娠の際にも大量の鉄分が要求されます。赤ちゃんの成長のためには鉄分が必要なのですが、全妊娠経過を通じて約500mgもの鉄分が必要だと言われています。これも先程述べました成人男子の1日の鉄喪失量1mgに比べると、実に膨大な数字だということがわかります。妊娠中のお母さんの十分な食事の管理が必要だとされるゆえんです。
5 貧血の原因疾患
次に貧血の原因となるべき疾患について考えてみましょう。貧血の原因は年齢と関係することが多いため、ここでは年代別に考えてみたいと思います。
まず先程、20歳以下でも貧血が認められると言いましたが、この年代では食事が不規則なために起こる貧血や子宮内膜症(この病気は子宮や卵巣が大きくなったり、月経痛が出てくるものです。)あるいは、卵巣から出てくる卵胞ホルモンと黄体ホルモンのバランスがとれない機能性出血の患者さんが認められます。これが20~40歳代までの成熟期では、子宮内膜症や機能性出血の他にも子宮筋腫の人が同じくらいの割合で認められるようになります。そして40~49歳の更年前期から更年期にかけては、子宮筋腫のための貧血が圧倒的に多くなり、貧血患者の50%を越えるに至ります。
一方、この年代から悪性腫瘍による貧血が目につくようになります。50歳代の閉経期では子宮筋腫がやはり多いのですが、悪性腫瘍による貧血の比率は少しずつ増加してきます。これが60歳以上の高年期になりますと、再度機能性出血の比率が増すのですが、同時に悪性腫瘍のための貧血の割合が著しく増加してきます。このように年代ごとに貧血の背景が変わってくることから、貧血の治療についてはきめ細かな配慮が必要だということがわかると思います。
6 貧血の治療法と食事指導
最後に貧血の治療と食事指導についてお話しします。鉄欠乏性貧血の場合、いかに効率的に鉄の吸収を良くさせるかが治療のポイントになります。食事療法や鉄剤による治療がありますが、一度出来上がってしまった貧血を食事だけで回復させるのは難しく、鉄剤による治療が第一選択となります。鉄剤は一般のクリニックでは経口か静注かで投与されますが、双方とも治療効果にあまり差はないとされています。ヘモグロビンで言えば、1日0.2g/dl程度の割合で増加すると言われています。
しかし、皆さんがよくご承知のように、鉄剤の経口剤は胃に対する負担が強く、内服できないという訴えがかなりあります。したがって胃の保護を同時に行うことが大切です。まず薬剤は食後に服用させることが望ましい他、健胃薬の併用は好ましいと考えられています。一方、制酸剤は用いるべきではありません。これは制酸剤が鉄の吸収を妨げることがあるとされているからです。また、ビタミンCの併用は鉄の吸収を良くすると考えられています。もちろん、コーヒー、紅茶、緑茶などは控えるのが普通です。この胃の副作用は、通常投与量に左右されると言われていますので、服用しにくい人は当初は薬剤の1日の投与量を少なくし、その後除々に増加させると良いとされています。またお互いに吸収を阻害し合うことがあるため、テトラサイクリン系の薬との併用は避けなければなりません。薬剤は通常貧血の改善が認められる4~8週間は内服が必要と考えられています。
しかし、その後の血液検査で貯蔵鉄の改善が認められるまで、さらに4~12週間の投与が必要との考え方もあります。
食事の注意に関しては、肉や魚に含まれるヘム鉄の方が殻物や野菜、海草などに含まれる非ヘム鉄に比べて吸収されやすいことから、肉や魚のほうが優先されるべきだと考えられています。ただ、貧血に良いとされるレバーは、最近飼料中に含まれているビタミン過剰の問題から、妊娠している人はむしろ取りすぎに注意すべきだとの指摘があります。同じ意味で妊娠中は脂溶性ビタミンであるA・D・E・Kなどは使用が制限されなければいけません。また胃液の分泌が高まるほど鉄の吸収が良くなると考えられているため、香辛料や適度のアルコールの摂取は良いとされています。なお、赤ワインは、その中に少量の鉄分が含まれているために、他のアルコールに比べて優れていると言われています。以上、鉄欠乏性貧血を中心に貧血について話しをしました。貧血への対応として、背景となる原因疾患を考慮に入れて適切な薬剤が十分に用いられること、さらに患者さんの健康を管理するという意味で、相応の食事指導がなされることも大切であろうと考えられます。
読売新聞2004年(平成16年)11月6日 掲載
生理以外に出血があると、女性はとても驚きます。
しかし、出血量が少なかったり、すぐ止まったりすると、つい病院に行くのが億劫になってしまう時があります。
出血は命にかかわる事でなくても、放っておくと人生に不利に働く事もあり、「診察を受けて」というサインと考えた方が良い時があります。
出血の主な原因をあげてみましょう。
① ホルモン系統の異常。
② 感染症(クラミジア、淋病等)
③ 妊娠に関係したもの。
④ 子宮筋腫、内膜症等。
⑤ 悪性の病気
⑥ その他、内科の病気等。
これを原因と年齢の関係を表したのが下の表です。(妊娠と良性の腫瘍は除いてあります。)

◆ホルモンバランスの崩れ
表のように、思春期の時の出血はホルモンバランスの崩れが多いのですが、原因として過度な部活や睡眠不足の時があります。
また最近は、本来比較的ホルモンバランスの崩れにくい性成熟期の女性の不正出血が多いことが目立ちます。
背景に男性と同じ環境で頑張らなければいけない事があるかも知れません。
このような症状が出た場合は、心身を休ませる心遣いが必要になります。
女性ホルモンを通しての「注意信号」と言えるでしょう。
更年期以後の出血は、ホルモン不足が原因の炎症の事が多く、黄色のおりものを伴う時があります。
◆感染症
感染経路については、最近十代から見つかる事が珍しくなくなってきました。
黄色や水様性のおりものと、少量の出血、接触出血等が主な症状です。
クラミジア感染では、放っておくと8~30%の女性で、おなかの中に炎症が広がる可能性があります。
これは将来の不妊と関係する事があり、注意が必要です。
対策としては、次のことが挙げられます。
① お薬をきちんと使う事
② 治ったことを確認する事。
③ パートナーも病院に行く事が大切です。
◆悪性の病気
子宮の出口に出来る子宮頸癌は、最近パピローマウイルスというウイルスの感染が問題になっています。
また、若い女性の子宮癌が増えており、当院の統計では三十代の方が一番多く見つかっています。
初期の癌では、少量の出血や接触出血が特徴的です。
早期に発見された癌は、子宮の出口の部分の切除だけで済む事が多く、将来、赤ちゃんを産む事も可能です。
子宮の奥に出来る体癌は、生理以外の出血が最初の症状の時があります。
ただし出血=体癌ではありませんので、冷静に対応しましょう。
読売新聞2005年(平成17年) 3月5日
■生理痛にもいろいろあります。
生理痛は、一度子宮の中に出た出血(月経血)が、子宮の外に押し出されるために起こるものです。
しかし、生理の時よりも、生理の前や後の方が痛かったり、生理の時の不快な気持ちが気になったりするという方もおられます。
これらの症状も、広い意味の生理痛と考えて良いでしょう。
■注意が必要な生理痛があります。
若いうちから生理痛があっても、 成人すると良くなったり、妊娠や分娩後に痛みがなくなる時があります。
しかし、すべての生理痛がそのようにうまく改善するとは限りません。
だんだん症状が悪くなる時もあります。
次のような症状が出てきたら注意しましょう。
・生理痛がだんだん強くなる
・鎮痛剤の量が増えてきた
・学校に行けない、職場で仕事にならない
・生理の量が増えてきた
・生理が長く続く
・おなかにしこりを感じる
・生理の前になると気分が落ち込む
・赤ちゃんが欲しいけれどなかなか出来ない。
■生理痛と病気
①診察で異常がない時
このような時は、主に鎮痛剤を内服しているうちに、自然に良くなる時があります。
しかし、何もないように見えても、不妊の時は話が別です。
不妊の方で、生理痛などの自覚的な症状が軽くても、おなかの中をみる「腹腔鏡」検査を行うと、約50%の方に子宮内膜症が見つかります。
症状が軽いと言っても、油断は出来ないということです。
ちなみに、この腹腔鏡検査の後に約50%の方が妊娠されるというデータがあります。
②子宮内膜症
生理痛がおこる代表的な病気です。
・少しずつ進行する時があること
・不妊症の原因になる可能性があること
・将来癌になる可能性があること
などから、子宮内膜症が疑われる時は、慎重な診察と適切な治療が必要となります。
治療は大まかに言えば次のようなコースで進むのが普通です。(下図参照)

③子宮筋腫
子宮筋腫で生理痛がおこる時があります。
子宮筋腫に対しては、筋腫を小さくするお薬を使ったり、症状に合わせたいろいろな手術療法など、きめ細かな治療方法が考えられています。
④気持ちの持ち方に問題がある時があります。
精神的なこと、ストレスなどが原因と考えられる生理痛があります。
鎮痛剤や漢方薬が用いられますが、心療内科的なお薬が効く時があります。
■生理痛と日常生活
痛みが強いのに、お薬を使わず我慢する方がおられます。
しかし、日常生活に影響が出るくらいの痛みの時は、むしろ、お薬を上手に使った方が良いと考えられます。
適度な運動は、生理痛に良いということが分かっています。
日ごろ、積極的に身体を動かすようにしましょう。
婦人科の炎症(最近クラミジア感染が問題になっています)が、生理痛を悪化させる時があります。
感染症はきちんと治療しておきましょう。
読売新聞 2005年(平成17年) 6月18日
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月経痛があり、診察を受けたら子宮内膜症と言われました。どんな病気でしょうか?
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子宮全体がはれたり、卵巣がはれたりして、月経痛や月経量の増加などの症状が出る病気を子宮内膜症といいます。貧血や不妊、腹痛、腰痛、セックスの時の痛みなどいろいろな症状が出る時があります。また病気自体は良性でも、少しずつ症状が進行する可能性があるため、早い段階で診断と治療が望ましい病気です。
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子宮内膜症になりやすい人はいますか?
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遺伝する病気ではありませんが、子宮内膜症が母親や姉妹のどちらかにあると発生する確率が高くなると考えられています。月経が8日以上続く方、周期が27日未満の方は比較的なりやすいと言われており、これらに当てはまる方で、月経痛のある方は一度検診を受けた方が良いでしょう。
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鎮痛剤はなるべく使用せず我慢しています?
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生理痛が強いのに我慢し続けるのはあまりおすすめ出来ません。日常生活に支障が出たり、我慢したりするうちに子宮内膜症が進行しては困ります。医師と相談して①鎮痛剤だけで良いのか②子宮内膜症本来の薬を使用した方が良いのか③何らかの手術的治療(多数の選択肢があります)が必要か判断が大切です。
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不妊の原因になる事はありませんか?
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不妊症の原因の約15%は子宮内膜症が関係しているとの研究があります。おなかの中を観察する腹腔鏡検査の際、症状がなくても、約半数の方に子宮内膜症が見つかります。この時に治療すると妊娠率が高まることが分かっています。
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がん化する心配はありませんか?
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高い確率ではありませんが、がん化する可能性もあると考えられます。①卵巣が大きくはれている②血液中の腫瘍マーカーが高い③超音波や磁気共鳴画像装置(MRI)検査で異常な像が認められる時は、精密検査や定期的検査をすすめられるのが普通です。
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再発する可能性のある病気でしょうか?
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子宮内膜症は女性ホルモンの影響をうける病気のため、ホルモンが働く年代の方は再発の可能性があると考えられます。再発の際は①前回用いた薬を再度用いる②薬をかえる③手術するなどいろいろな治療方法がありますが、治療効果や副作用など医師と詳しくお話することが大切になります。
読売新聞 2005年(平成17年)10月1日
今日は中学3年生の女の子がお母さんと来院されました。
母・・・娘の生理が不順で,今月で4か月ありません。昨年まではきちんとあったのですが。
娘・・・勉強もあるし、部活もあるので・・・・。
母・・・それにダイエットもしているようで、このごろやせてきたみたいです。
娘・・・そんなことないよ。2キロしか減ってないよ。
母・・・寝るのも遅いわね。もっと計画的に一日を過ごしてみたら。
娘・・・勉強が終わったらすぐ寝るという訳にはいかないの。やりたい事もあるし。
医者・・・分かりました。ところで睡眠は何時間ぐらいですか。部活は何をしていますか。
娘・・・睡眠はだいたい6時間ぐらいです。部活はバレーボールをしています。
母・・・熱心な先生で、日曜も練習に行くんです。娘は休みたい日もあるようなのですが。
医者・・・いろいろ問題があるようですね。一つずつ考えてみましょう。
問題点の一つは部活が忙しいことです。結局は睡眠時間にしわ寄せがきているみたいですね。体力の低下や睡眠不足は、若い女性の生理不順の原因になります。
一回の生理で約30~60ccの出血があります。鉄分でみると約15~30ミリグラムの喪失ですが(男性は一日で1ミリグラム)、次の生理までにこれを回復しなければなりません。それが無理と判断されると、生理を起こさないで体力を温存しようという力が働いてしまいます。
部活に熱心な先生ほど、こういうことが起きる傾向にあります。「熱血指導」は良いのですが、精神と体のバランスを考えて指導することが大切です。
二つ目はダイエットです。若い人はダイエットが過激に、そして期間が長くなるほど、副作用が出た場合、その後の改善に時間がかかる可能性があります。
しかしダイエットの問題は複雑で、その裏には心療内科的な問題や、重大なストレスが潜んでいることもあります。
どうしたら良いか、本人や家族が戸惑う時は、素早く医師と相談されると良いでしょう。相談しているうちに、内科、心療内科、産婦人科など通院すべき科がはっきりしてきます。
医者・・・さて、今日は簡単なホルモン検査と貧血の検査をしましょう。一週間後に結果が出ますから、それを見て治療計画を立てましょう。
読売新聞 2006年(平成17年) 1月21日
不妊治療
Q_結婚して一年半たちました。そろそろ赤ちゃんが欲しいのですが。
A_世界共通のようですが、結婚後1年で約80%のカップルが妊娠されています。2年では90%です。
Q_それでは、そろそろ病院に行く時期ですね。
A_そうですね。それともう一つ大事なことがあります。妊娠率に差はないのですが、女性の年齢が高くなるにつれて、流産率が高くなるという点です。その意味で、女性の年齢がある程度高ければ(37.38歳ぐらい)、早めに相談に行くことも大切です。
Q_病院に行くと、まずどんな話があるのでしょうか。
A_まず検査の話があります。女性側では、月経周期に合わせた検査もありますので、検査の方法、目的、手順等について詳しく話を聞きましょう。
Q_どんな検査がありますか。
A_統計上、赤ちゃんが出来にくい4大原因というのがあります。
①排卵の異常
②卵管の異常
③精子の異常
④子宮内膜症(重症タイプ)です。
それ以外の原因を含めて、全体的に検査を受けるのが普通です。ただ、検査中に約20%の方が妊娠されます。
検査自体が治療を兼ねる部分があるからだと考えられています。
Q_検査で異常が見つかると、そこを治療するということですね。
A_その通りです。しかし治療をしても妊娠しない時、原因がはっきりしない時もあります。そうした時は、医師から改めて治療について話があるでしょう。
Q_原因が分からなければ治療は難しいのでは?
A_不妊治療の場合は、そうとは限りません。原因の有無とは別に、治療のシステムが比較的確立されているからです。
①排卵日をみてのタイミング指導
②排卵誘発剤の使用
③人工授精
④体外受精-という順に治療が進められます。
例えば、①に比べ③は2~4倍妊娠します。④は③の1.5倍です。
Q_ではいきなり体外受精をする方が良いのでは?
A_そうとも言えません。実は不妊治療では、人工授精までの段階で、約70%の方が妊娠することが分かっています。通院の期間、薬剤や治療の際の副作用等を考えると、①~④に進んだ方が合理的と考えられます。ただこのほかに、不妊期間、女性の年齢、他の合併症の有無等が、治療を考える上での大切な要素になります。
治療計画については、副作用を含め、医師と詳しく話をすることが大切です。
女性せいかつ情報紙オントナ 2005年10月26日
今回の質問
子宮がん検診を受けたところ、「クラスⅡ」と言われました。昨年は「クラスⅠ」でしたが、ⅠからⅡになったのはとても気になります。
将来がんになる可能性があるのでしょうか?(50歳 主婦)
答え
結論から先に申し上げると、今現在では心配ないと思います。子宮がん検診は、がんのできやすい部分の細胞を採って顕微鏡で検査します。結果は、クラス分類といって「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」(「Ⅲa」と「Ⅲb」に分かれます)「Ⅳ」「Ⅴ」の5段階で表されます。
このⅠ~Ⅴまでの結果はそれぞれ意味があるのですが、おおまかに次の3つに分けて考えると分かりやすいでしょう。
○クラスⅠ、Ⅱ…異常なし
○クラスⅢa、Ⅲb…気を付けて
○クラスⅣ、Ⅴ…がん、またはがんの疑い
ご質問の方のクラスⅡは異常なしのグループに入ります。ではなぜ、「異常なし」なのにⅠ、Ⅱがあるのでしょう。
Ⅰはまったく異常のない状態です。Ⅱは基本的に異常はないのですが、炎症やホルモンのバランスの崩れが起きて、顕微鏡レベルで、やや活発な活動を示す細胞が現れる状態をいいます。
Ⅲあるいは、Ⅳ・Ⅴのグルーブでも活発に活動する細胞が現れますが、Ⅱの細胞とは明らかな差があります。これらの差は、細胞を検査する専門家の目で見ると、比較的容易に区別が可能です。
Ⅱの方のほとんどは、時間が経過し、炎症などの原因が治まればⅠになると考えてよいでしょう。
なお検診でクラスⅢa以上が見つかった場合は、医師から詳しい説明があるのが普通です。現在異常なしの方でも、健康管理のため、定期的な検診を受けることをお勧めします。
女性せいかつ情報紙オントナ 2006年3月1日
今回の質問
結婚して5年、まだ妊娠しないので婦人科を受診。卵管が詰まっているため、妊娠しづらいと言われました。治療法の1つとして体外受精を勧められましたが、ほかに方法がないか教えてください。(35歳 主婦)
答え
卵管が詰まった人の治療方法は、大きく分けて2つあります。一つは体外受精、もう一つは詰まった卵管を通すようにする方法です。
卵管を通るようにする方法には、「手術」と「FTカテーテル法(卵管鏡下卵管開口術=らんかんきょうからんかんかいこうじゅつ)」があり、最近はFTカテーテル法が広まりつつあるようです。これは子宮の方から卵管の中に“バルーン”という細い管を入れ、詰まっている卵管を少しずつ広げる方法。腹腔(ふくこう)鏡でおなかの中を観察しながら行うと、さらに治療効果が高まる可能性があります。
この方法の利点は、一度卵管が通ると、再癒(ゆ)着がない限り、2人目、3人目も自然に妊娠が可能になる場合があることと、保険が適用になること。
欠点は、卵管の詰まり方によっては治療効果が落ちることと、治療可能な病院が限られているということです。
体外受精は、すでに確立された治療法です。排卵誘発剤を用いて卵の入っている卵胞を大きくし、排卵の準備ができたと判断された時に、この卵胞から卵を取ります(採卵といいます)。この卵の入っている容器に精子を入れ受精させ(体の外で受精させるので体外受精といいます)その受精した卵(受精卵)を子宮に戻す方法です。体外受精は20年以上の歴史があり、妊娠率などのデータがそろっています。
不妊治療を受ける人は、これらのデータや治療手順、考えられる副作用など、主治医から詳しく話を聞くことが大切です。
女性せいかつ情報紙オントナ 2006年6月28日
今回の質問
クラミジア感染症は、一度かかったら再発しやすくなり、不妊の原因にもなると聞きました。どのような病気なのか、詳しく教えてください。(24歳 OL)
答え
クラミジア感染症は、今や10代から50代まで、幅広く広がっています。身近で感染する人が多いことから、この病気を簡単に考える風潮もあるようです。「セックスでかかる風邪」ぐらいに考えている人もいるようですね。しかし、クラミジア感染症を軽く考えるのは危険です。3つの注意点を挙げておきましょう。
①女性にとって治療が不十分だと、腹膜炎の症状が出ることがあります。この病気は、重症になったり、繰り返して感染すると、不妊の原因になることも。また、感染したまま妊娠すると、流産や早産の原因になることもあると考えられています。
②男性に感染があった場合は、精子を作る精巣や、精子を運ぶ輸送路に障害が起き、将来、男性不妊の原因になることがあります。
③ほかの感染症を起こしやすくなることがあります。淋(りん)病は、感染率が上がることが明らかになっており、子宮頸(けい)がんや、尖圭(せんけい)コンジローマの原因と考えられているパピローマウィルスの感染も起こりやすくなるのです。
また、HIV(ヒト免疫不全ウィルス)感染症も、クラミジア感染症と関係がある、との考えもあります。現在、HIV感染症の人は、1日2.1人の割合で増えていますが、先進国の中で増加しているのは日本だけです。
クラミジア感染症は、決して「風邪」のような病気ではありませんが、「万病のもと」になる可能性があるのです。気になるときは、産婦人科に相談を。
読売新聞 2006年5月20日
Q_市販の妊娠判定薬で調べたら、妊娠反応が陽性になりました。早速病院に行こうと思っています。
A_そうですね。市販の判定薬の信頼性は高いのですが、病院で赤ちゃんが正常に成長しているか、子宮外妊娠をはじめとする異常妊娠がないかなどのチェックを受けることが大切です。
Q_赤ちゃんが順調に育っています。でも、とてもつわりが強いのですが。
A_つわりは妊娠すると約60%の人に起きます。しかし、どんなに症状がつらくても、12週より長く続くことはほとんどありません。ゴールが見えている訳ですから、もう少し頑張りましょう。ただし耐えられないときは、症状に応じて内服薬を処方されたり、点滴を勧められたりします。これらの治療でかなり改善します。
Q_少し赤ちゃんが大きくなってきました。友人から今が大切だからと、いろいろなサプリメントを勧められています。
A_妊娠中のサプリメントの摂取はあまりお薦めできません。妊娠中に足りなくなるのはカルシウムだけです(葉酸の摂取を勧められる場合もありますが)。むしろビタミンA・Eなど、過剰にとると、赤ちゃんに悪影響が出ると考えられる成分もあります。
Q_妊娠中、お酒やたばこはダメでしょうか。
A_これらは控えた方がいいでしょう。統計では、喫煙により流産率は2倍、早産率は3倍になるとされています。また、妊娠すると90%の女性が禁煙するというデータもあります。アルコールについては、どのくらいまでなら安全かということが分かっていません。しかし、お母さんの飲酒は、おなかの中で赤ちゃんも一杯やっているのと同じだと考えると、控えた方が良いと言えます。
Q_おなかが大きくなってきました。検診の際、食事に気をつけるよう言われました。
A_大切なのは、体重の管理とバランスの良い食事です。
①間食をしない
②食事を薄味にする
③果物はカロリーが高いので気をつける(意外と盲点ですが)-ことが大切です。
夕食時を含め、夜は果物をとらないようにしましょう。妊娠中の体重増加は、日本人の平均で10~11キロです。ただし、元々体重のあった人(55キロ以上)は、より厳重な管理が必要となります。
現在はたくさんの情報があふれています。過剰な情報に惑わされず、楽しい妊娠ライフを過ごせると良いですね。
読売新聞 2006年8月12日
Q_いま妊娠中です。最近赤ちゃんにアレルギー性の病気が増えてきていると聞きました。私もアレルギーがあるので心配しています。
A_最近の調査では、アレルギー性の病気(アトピー性皮膚炎など)が、3歳児の約40%に見つかっています。またその割合が少しずつ増えてきているほか、普通なら治る年齢になっても、治らないという傾向が出てきています。
Q_アレルギー予防のため、妊娠中に何か注意することはありますか。
A_両親のどちらかにアレルギーがあると、赤ちゃんにアレルギー性の病気が起こる確率が少し高くなります。妊娠中の食事などでこれらのアレルギーを予防しようという考えがあり、卵や乳製品を制限した方が良いという専門家もいます。しかし、食事とアレルギー発生は関係が無いという調査もあり、結論が出ていないのが現状です。
Q_完全な予防法は無いとしても、何か注意した方が良いことはありますか。
A_
① まず偏食をせず、バランスの良い食事をとることをお勧めします。
② 1日3食をきちんととると、アレルギー発生率が減るという調査があります。
③ 最近、アレルギー予防として和食が見直されています。みそ、しょうゆ、漬物などの発酵食品には、大豆や麦などのアレルギーを抑える作用があると考えられています。
④ 牛乳は飲み過ぎない方が良いでしょう。1日200ccくらいが目安です。
⑤ 卵は加熱してからというデータがあります。
⑥ リノール酸が多いインスタント食品はとり過ぎないように注意しましょう。
Q_妊娠中の食事以外に気をつけた方が良いことはありますか。
A_出来れば母乳をあげることが一番です。母乳の中にはアレルギーを抑える成分が入っています。また乳製品は将来のアレルギーの原因になることがあり、主成分が牛乳であるミルクより、母乳の方が赤ちゃんに優しいと考えられています。
Q_母乳が良いことが分かっているのですが…。お産のこと、母乳が出るかなどを考えると、いろいろ悩む時があります。
A_実は最近そういう悩みを持つお母さん方がとても多いのです。でも赤ちゃんは出生後、目が見えなくてもお母さんの乳首を探し当てます。赤ちゃんがサインを送ってくれます。お母さんは、それを見ているだけで良いのです。
女性せいかつ情報紙オントナ 2006年10月11日
Q_ 月経痛が重く、婦人科を受診したところ、「卵巣チョコレートのう腫(しゅ)」と診断されました。どのような病気でしょうか?
また、治療法についても教えてください。
A_卵巣チョコレートのう腫は、本来、子宮の内側にある子宮内膜組織が、卵巣の中にできる病気です。月経のたびにここに出血するため卵巣が腫れ、痛みなどの症状が出てくるのです。生理痛や性交痛など、子宮内膜症独特の症状が出るほか、不妊症の原因になったり、一部は将来、悪性腫瘍(しゅよう)に変わる可能性もあると考えられています。女性にとっては見過ごせない症状が出る病気のため、きちんとした治療が必要になってきます。
① 小さくて(直径3cm以下が目安)痛みがなく、不妊の原因にもなっていないときは、経過を見るだけで良い場合があります。
② 月経痛などの症状があるものの、あまり大きくないとき(大きさについては医師と相談を)は、薬剤による治療が進められる場合が多いようです。ただし症状の改善は見られますが、チョコレートのう腫が完全に無くなるわけではありません。治療後に再発する可能性もあります。
③ チョコレートのう腫がある程度大きい、あるいは急に大きくなった、明らかに不妊の原因になっているときなどは、、手術を勧められることがあります。手術は開腹手術、腹部に数ヶ所穴を開けて行う腹腔(ふくくう)鏡下手術、それと膣式にのう腫を処理する方法があります。
それぞれ利点と問題点があるので、医師とよく相談することが必要でしょう。この病気の治療法はたくさんあり、その選択が重要になります。一人ひとりに合わせた“オーダーメード”といえる、自分に合った治療法を選ぶことが大切です
読売新聞 2006年11月18日
Q_おなかの赤ちゃんが少し大きくなってきました。そろそろ胎教を考えています。
A_それは良い考えですね。胎教で大切なのは、まず赤ちゃんの立場で考えてあげることです。赤ちゃんが好みそうなことをやってあげる。反対に嫌がりそうなことはしないのが基本です。
絵本を読んであげたり、音楽を聴いたりしています。赤ちゃんの聴覚は比較的早く発達します。また脳の神経細胞は、妊娠7ヵ月ぐらいから発達を始めます。早い時期から聴覚を通して、脳に刺激を与えるようにしてあげると良いですね。
このほか、赤ちゃんの周囲の環境を整えるという意味で、家庭の中の温かい雰囲気が大切でしょう。お母さんの副交感神経(リラックスすると働く)が優勢になると、赤ちゃんも幸せです。
胎教と言えば音楽と考えて、クラシックを聴くようにしています。胎教に音楽はとても良いでしょう。クラシック音楽もそうですが、お母さんの好きな曲、心が休まるような曲なら何でも良く、別にクラシックにこだわることはありません。童謡でも子守歌でも、氷川きよしでも結構です。
でも、モーツァルトの曲が良いと聞きました。本当でしょうか。モーツァルトが胎教に良いのは確かでしょう。ただ科学的な根拠がはっきりしているわけではありません。
①モーツァルトの曲が嫌いだという人はあまりいない
②旋律に繰り返しが多く、心地よく聴ける
③高周波音が豊富で脳に達しやすく、良い刺激になる-などの説があります。
しかし、音楽の選択は義務ではありません。好みの曲を聴くのが一番です。
散歩したり、公園に行ったりするだけで、何かホッとします。これも胎教になるのでしょうか。それが本当の胎教ではないでしょうか。森の中を通るかすかな風の音、小川のせせらぎなどは、モーツァルトの緩やかな旋律の繰り返しと同じです。自然の胎教と言えるでしょう。
そのほか気をつけることはありますか。生まれたばかりの赤ちゃんは、みんな少しずつ個性が違うことが分かります。本当に泣き声一つで、おなかの中にいた時の環境が分かることがあるぐらいです。その意味で、お母さん方が、気持ち良く、楽しい妊娠生活を送られることが何より望まれます。
読売新聞 2007年2月17日
不妊治療 心に残る言葉 -飯塚先生に捧ぐ
どの世界でも同じでしょうが、医療に携わっている人間は毎日が修練の場です。先輩や同僚だけではなく、日ごろ接する患者さんが先生でもあります。
今回は不妊治療で経験した話をします。まだ20代のご夫婦が患者さんでした。
いろいろ治療したのですが妊娠せず、体外受精を行うことになりました。普通、20代ですと妊娠率はかなり高いのですが、2回の体外受精でも結局、妊娠することは出来ませんでした。2回目の体外受精で妊娠していないことが分かった時のことです。
夫婦 「先生、これで不妊治療をやめにします」
私 「え、なぜですか?もう少し頑張ってみては」
夫婦 「先生も努力してくれたと思いますが、私たち二人も頑張りました。これから治療を続けて、妊娠することがあるかもしれませんが、そうでない可能性もありますよね」
私 「それはそうです」
夫婦 「では私たちは考えを決めています。これから治療を続けていて、もし妊娠しなければ治療を続けたことを後悔するかもしれません。これからの人生の方が長いし、二人だけの充実した人生設計を立てたいと思っています。」
このご夫婦の言葉は、私の不妊治療のバックボーンになっています。
私の大学時代の恩師に飯塚理八教授(旧制釧路中学出身)がおられました。日本の不妊治療の先駆者でもあり、指導者でもありました。昨年11月に亡くなりましたが、先生の常に言われていた言葉が耳に残っています。
「不妊治療は常に最新の知識を持って臨まなければいけません。でも、もし医学的にみて妊娠が不可能であると判断されたら、速やかにその旨を伝える事が医師の義務です。それは今後のご夫婦の生き方に大きな影響を与えることになるのですから」
これは医療に関する情報が、治療する側と、受ける側で共有されなければならないという意味でもあるでしょう。
不妊治療は年々進化をとげているのは事実です。あっと驚くようなニュースが流れる時もあります。しかしその恩恵を受けられるのは、限られた条件に合った人たちだけということもあります。実際、治療が進んでも不妊の方の割合は減っていないという調査もあります。
赤ちゃんを産むために頑張るのも大切でしょう。でも少し立ち止まって、人生をもう一度考えるのも大切ではないでしょうか。充実した人生を送るために。
女性せいかつ情報紙オントナ 2007年4月18日
子宮頚がん検診で、「細胞診クラスⅢa」と診断されて、相談に来る人が多くなりました。細胞診の結果は、ローマ数字でⅠ~Ⅴまでの5段階に分かれて出ます。このうちⅢだけは「Ⅲa」と「Ⅲb」に分けられます。大体の目安として、Ⅰ、Ⅱが正常、Ⅳ、Ⅴががんです。ⅢaとⅢbは“気を付けて”という意味と考えてよいでしょう。
ではクラスⅢaが出ると、次はどんな検査を勧められるのでしょうか。大体3ケ月後くらいにもう一度細胞診検査を受けることと、膣拡大鏡検査、そして必要なときは組織検査を勧められることが普通です。これは、例えると胃がんの集団検診で異常があると、胃カメラ検査(膣拡大鏡検査に相当します)を勧められます。胃カメラで異常がありそうな部分があれば、そこを切り取って組織検査を行いますが、婦人科の組織検査と同じ意味になります。この組織検査が、がんに関する最終的な診断になります。
ではクラスⅢaは、将来がんになる可能性があるのでしょうか。Ⅲaの説明の前に、Ⅲbについて先に話しておきましょう。Ⅲbは組織検査で見ると、高度異形成上皮(いけいせいじょうひ=初期のがんに似た形をしているが、まだがんにはなっていない状態)が見つかることが多くあります。この状態から約20%の人が、将来初期のがんになると考えられています。これに対し、Ⅲaの場合は将来がんになる確率が2~3%というデータがあります。逆にいうと、97~98%の人はそのままか、正常に戻るということです。
「それではⅢaはあまり心配のない状態か」というと、そうともいい切れません。それは、子宮がんの原因と関係があります。
最近子宮頚がんの原因はHPV(ヒトパピローマウィルス)の感染によるものがほとんどだろう、と考えられるようになってきました。このHPVの中に、将来がんになる可能性が高いハイリスクグループと、そうでないローリスクグループがあることも分かってきています。現在Ⅲaだとしても、ハイリスクグループのウィルスが感染していると、将来がんになる可能性があると考えられます。
このように、細胞診検査でクラスⅢaが出たときは、今までの診断法ではない新しい診断技術が育ちつつあります。ただ、新しい検査法であるだけに、その必要性、時期、費用などのほか、出た結果をどう評価したらよいかなど、主治医と詳しく相談することが大切です。
読売新聞 2007年5月26日
子宮頚がんとウイルス
Q_ 子宮頚がんの発生にウイルスが関係する可能性があると聞きました。
私も定期健診が必要と言われているため、関心があります。
A_ 子宮頚がんの原因にウイルスが関係しているらしいということは、以前から言われていました。約25年前にヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頚がんの人に高率に見つかることが分かってから、このウイルスとがんの関係の研究が急速に進んできました。
現在、子宮頚がんの95~99%はHPVが関係していると考えられています。
Q_ どういう経路で感染するのでしょうか。
A_ 今のところは性感染が最も多いと考えられています。ただそれ以外の感染の経路の可能性も否定できません。
Q_ 最近、若い女性の子宮がんが増えていると聞きました。HPVの感染は広がっているのでしょうか。
A_ 確かに若い女性にがんや、その前段階といえる異常(異形成上皮といいます)が増えてきているのは事実です。
私のクリニックでも、異形成上皮は若い女性ほど多く見つかる傾向があります。1番多く見つかるのが25~29歳、2番目が20~24歳です。
Q_ HPV感染もその年代に多いのでしょうか。
A_ HPVについては国や地域によって少し差があるようです。例えば日本では、20代の女性の20%が感染していることが分かっています。アメリカでは14~19歳の女性で24~25%、20~24歳で44~48%の感染率とのデータがあります。ただ、どこの国でも若い女性の感染率が高いことだけは事実のようです。
Q_ HPVに感染すると、がんやその前段階に必ずなるのでしょうか。
A_ 今のところ、そうは考えられていません。感染してもウイルスが消える人がいるからです。またHPV感染者は、将来がんになる可能性のあるタイプ(ハイリスクグループ)と、そうではないタイプ(ローリスクグループ)に分かれます。
HPVに感染しても、ローリスクグループなら、将来がんにならないで済みそうです。
Q_ この検査をすれば、今までのがん検診が必要なくなるのでは?
A_ そうとも言えません。
細胞診検査では現在の異常が分かります。これに対し、HPV検査は将来を推測できます。2つの検査を上手に利用することで、がんの早期診断を可能にし、有効な治療を進めることが出来るのです。
読売新聞 2007年8月25日
Q- 子宮頸がんの原因がヒトパピローマウィルス(HPV)であるとよく聞きます。HPVはどうして感染するのでしょうか。
A- 主な感染経路は性行為と考えられています。しかし、「いつ」「だれと」と言うより、セックスそのものが感染の原因になると考えた方が良さそうです。セックスの経験があると、約50~80%の人が一度は感染するとの研究があります。しかしこのことは、セックスがある以上、感染は避けられないと言い切っているわけではありません。やはりパートナーは特定の人に決めておいた方が良いことが知られています。
Q- HPVは感染しても消えることがあるそうですが。
A- その通りです。ウィルス検査を続けると、約90%の人のウィルスが消えることが分かっています。このことは、女性の年齢が進むにつれて感染率が減るという調査と一致します。しかし50歳以上でも約10%の人に感染が持続しているというデータがあり、その意味では、何歳になっても子宮がん検査は必要ということになります。
Q- 最近、HPVに効くワクチンが開発されたと聞きました。これで子宮頸がんがなくなる可能性はあるのでしょうか。
A- 残念ながら、ワクチンはまだHPVに感染していない人には効果がありますが、既に感染している人には効きません。このためHPVの治療薬としての作用は期待できません。
Q- ワクチンが効かないとすると、何か良い方法がないでしょうか。長い間検診にだけ通っていると、不安を持ってしまいます。
A- 現在そのことが問題になりつつあります。HPV感染と言われた後、いつまで定期的検診が必要なのか、将来どうなるかといった不安が出てきます。
これには幾つかの解決策が考えられます。一つはHPVのタイプを調べ、がんになる可能性のあるタイプ(ハイリスク)か、そうではないタイプ(ローリスク)かを早く知ること。もう一つは、あまり通院が長くなる時は、子宮のがんの出来やすい部分だけを切除する手術(円錐切除)を受けることです。この方法は子宮本体が残るので、将来赤ちゃんを産むことも可能です。さて最後に大事な点を。
最近、子宮頸がんの死亡率が減ってきました。しかし若い女性の死亡率が逆に上昇しています。若い女性も積極的にがん検診を受けることが大切です。
女性せいかつ情報紙オントナ
Q_ 40歳を過ぎた頃から、生理前日になると頭痛や吐き気の症状が続きます。
生理の時だけなので脳神経外科を受診したこともありません。閉経するまで続くのか不安です。
原因はあるのでしょうか?(45歳 主婦)
A_ 月経の前から身体的、あるいは精神的症状が出て、月経が来ると同時に症状が軽くなる「月経前症」という病気があります。
今のところ、月経周期に合わせて症状が出たり消えたりすることから、何らかのホルモンの関与が推測されています。この時に、出てくる身体症状として、頭痛、動悸(どうき)、吐き気、腹部の張り感などがあり、精神的な症状として、うつ気分や気分の減退、物忘れなどがあります。
ご質問の方は、症状が生理の時だけなので、この「月経前症」の可能性があるかもしれません。
治療は、薬による方法が主体です。
(1)ピルなどのホルモンを調整する薬
(2)「月経前症」の原因として、脳の中の神経のいろいろな命令を伝える物質(神経伝達物質といいます)に異常があるとの考えから、この神経伝達物質の働きもコントロールする薬(主に、抗うつ剤や抗不安剤)、
(3)漢方薬、などが使用されます。
医師は悩まされている方の症状、重症度、年齢、副作用の可能性などを考慮して、最も適切と思われる治療をお勧めするのが普通です。
ただし、注意しなければいけない点があります。頭痛の時は、脳外科の病気、吐き気の時は消化器系の病気など、それぞれの症状で専門医の診断が必要な病気が隠れていることがあることです。
また、年齢や環境、併用されている薬などによっては、「うつ状態」が本当の原因の時もあります。
まず、医師とよく相談されることが大切でしょう。
女性せいかつ情報紙オントナ 2008年3月5日
団塊の世代が更年期を迎える時期となり、外来でも更年期についての質問が増えてきました。
更年期障害には幾つかの代表的な症状があります。
(1)上半身がカーッと熱くなる。時と場所に関係なく汗が出る
(2)頭痛、肩こりなどがある
(3)何となく気力がなくなる。
睡眠が浅い、朝早くに目が覚める。人付き合いが嫌になってきたなどです。
しかし、更年期の症状と思っても実は違う病気の時もあります。
(1)自律神経失調症
(2)心身症
(3)うつ状態あるいはうつ病などがそうです。
現在の状態が更年期障害によるものかどうか正しい診断を受けるためには
(1)自分の今の症状や悩みを正確に伝えること
(2)必要な検査を受けること(血液検査や心理テストなど)
(3)更年期障害用の薬剤を使用し、効果があるかどうかを見極めることが必要です。
これらの点については担当医から詳しく説明があるでしょう。
さて、更年期障害と診断されたら、どんな治療が勧められるのでしょうか?
これには注射剤、内服薬、貼付薬あるいはクリームのように塗る薬などから、効果と使いやすさ、起こり得る副作用などを考えながら薬剤が処方されることになるでしょう。
ただ、更年期障害の症状に、うつ症状が加わっているときは話が違います。症状を見ながら、うつ症状に効く薬がホルモン剤より優先されることがあります。
更年期障害は治療の後も大切です。
回復に個人差がありますが、その症状はほとんどの人が改善します。ここから次のステップが始まります。
もともと更年期障害とは、それまで出ていた女性ホルモンが大幅に減り、ホルモンの環境が変わったために起こるもの。
これに対し、今まで出ていなかったホルモンが出るために起こるのが初潮です。これもホルモンの環境が急に変わる時期には違いありません。ホルモンがさらに働くようになると女性らしさが増します。季節に例えると春でしょう。だから青春。
では、更年期は秋?しかし、秋は秋なりの重みがあるというものです。この世代、人生経験はそれなりに深くなり、若い頃より思慮深く、仕事に対する理解度が高くなります。
80代になって振り返ると、50~60代が最も充実した人生だったという人が多勢います。そうです。更年期は第二の青春でもあるのです。この時期を有意義に過ごすことが何より大切です。
女性せいかつ情報紙オントナ 2008年11月5日
八五郎の運命は!?
これが本当の風前のともしび
のっけから死神というと気に障る人がいるかもしれませんが、落語の話なので。
ひょんな所で貧乏どん底の八五郎と死神が知り合いになります。
八五郎があんまり気の毒なので死神が知恵を授けてくれました。「医者の看板をかけてごらん」。八五郎にだけ見える死神が、病人の頭の側に座っていれば手遅れ、足元に座っていれば助かる運命だと言います。
足元に座っているとき「テケレッツのパ」と呪文をとなえると、あーら不思議。死神が消えて病人が元気に。これが評判を呼ばない訳がありません。八五郎はあっという間にお金持ちに…。
ある時、大店の主人が病気になって八五郎が呼ばれます。行ってみると、これはいけません。死神が枕元にいます。でもよく見るとウトウト居眠りしているではありませんか。
八五郎はその間に、病人の布団をそーっと動かします。死神が目をさますと、何と病人の頭は反対側。病人は治りましたが死神はカンカン。
怒った死神は八五郎を洞窟に誘います。そこにはたくさんのロウソクが…。
「こりゃ何だい?」と八五郎。「寿命さ」と死神。
中に今にも消えそうなのが一本。「これは誰のだい」「お前さんのさ」「何とかしておくれよ、助けてくれ!」「それじゃ消えそうな灯を別なのと取り換えるんだな」。八五郎が恐る恐る灯を移し換えようとした所にサーッと風が…。灯が消えた…。お後は落語で…。
空想世界から現実に
この人間の寿命が分かるというお話が、現実になるかも知れません。もっとも男性だけのお話ですが。
男性ホルモンの代表的なものにテストステロンがあります。これの値は全死亡、心臓血管系の病気による死亡、がんによる死亡と反比例関係があるそうなのです。
男性1万1606人を対象に研究した結果、血液中のテストステロンが低い程、死亡者が多いとのことです。また心臓血管系の病気やがんによる死亡率も高かったとのこと。死神のロウソクみたいな話ですね。
ところで、このテストステロンの塗り薬があります(日本にはありません)。
この薬を使うと寿命が延びるかどうか、今、研究中だそうです。
女性せいかつ情報紙オントナ 2009年7月8日
ビタミンEには多様な効能が。
ただし過剰摂取には副作用も。
秦の始皇帝は、紀元前220年、戦国時代だった中国を統一しました。ちなみに当時の日本は縄文時代から弥生時代に変わる時期でした。
何せ約25年で全国を統一した皇帝ですから、その権力は絶大だったようです。自分の居所を教えたというだけで側近全員を罰したり、当時の学術書を焼き払い、学者460人を生き埋めにしたりしました=焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)。さぞや側近たちは、日頃から皇帝の顔色をうかがいつつ生活していたことでしょう。
しかし、そんな皇帝を堂々とだました人がいます。しかも、2回も。そのキーワードは「老い」でした。史記(秦始皇本紀)では徐ふつ(じょふつ)、日本では徐福という名で知られている人物は、海の先にある国に不老不死の神薬があると言ってまんまと皇帝をだましたのです。この徐福が目指したのが日本だったという「徐福伝説」があります。また、徐福が求めた神薬は、今考えると「ビタミンE」だという説もあります。
ビタミンEは、試験管の中でヒトの細胞を育てているときに加えると、細胞の寿命を延ばす力があります。つまり、寿命に関係するホルモンだということが分かっています。
さらにビタミンEには、身体に有害な作用のある活性酸素の働きを抑える作用もあります(抗酸化作用)。活性酸素とは、人間の身体に有害に働き、動脈硬化や老化・発がんなどと関係があると考えられています。また、ビタミンEはアルツハイマー病の進行を抑える作用もあるそうです。
さて、ビタミンEが多い食べ物は、胚芽米、小麦胚芽、大豆、落花生などです。よく考えると、これらはみんな中国原産か中国経由で入ってきたもの。まさか徐福が皇帝に献上せず日本に持ち込んだ…なんて事は無いでしょうね。
最後にビタミンEの副作用についても一言。
このビタミンは、妊娠中の過剰摂取は避けるよう指導されています。また、ビタミンEを摂り過ぎると脳出血が起こりやすいという研究もあります。やはり程々が大切なようです。
女性せいかつ情報紙オントナ 2010年3月10日
それは1997年から始まった。-人の心と経済と-
暗いお話から始めて恐縮ですが…。
世界で最も読まれている医学雑誌の一つ「ランセット」によれば、ソ連が崩壊した後、同盟国だった東欧の諸国で、急速に国営企業を民営化した国と、そうではなかった国で死亡率に差があったそうです。
民営化を急いだ国は失業率が3倍になり、同時に男性の死亡率が40%以上高くなったのに対し、民営化を急がなかったチェコやポーランドでは、失業率の上昇も2%にとどまり、男性の死亡率も10%以下だったとの事です。
1979年イギリスではサッチャー政権が誕生。それまで停滞していた同国経済の立て直しが目的でしたが、目標は急速に達成されました。
しかしその裏で、失業率の増加、賃金の低下、貧富差の拡大、そして低所得者層の生活の困窮化が起こりました。
80年代に始まった大量の失業は、5年後に40―59才の男性の死亡率の倍増という結果で表われたと言われています。(「BMJ誌」=イギリスの医師会が発行する雑誌)。
では日本ではどうでしょうか。自殺者が目立って多くなったのは98年からです。それ迄「20年」以上も年間2万人台だった自殺者が、この年を境に3万人を越えたのです。
その前年97年末に起ったこと…。大銀行や大手証券会社の破綻でした。この頃から日本の経済構造の変革が声高に主張され始めた様に思います。
こうしてみると、その時々の経済情勢は人の心に大きな影響を与える事が分かります。
しかし、一方で明るい光も見えてきています。先のイギリスの例では、進学した人の気持が格段に前向きになったということから、「若年者の雇用面の不安のある時こそ進学率を上げるべき」との結論が出ています(「BMJ」)。
さて、今は新しい出発の季節です。
この時期、心の中で「進学」=「学を進める道」にチャレンジしてはいかがでしょうか。
この道に決まった道はありません。
しかし誰もが歩む事ができ、決して途切れる事のない道でもあります。
始めてみませんか。時間がかかっても…。マイペースで。
実験室レベルでのお話ですが。
男性ホルモンの1つに、テストステロンというホルモンがあります。
このホルモンは最近いろいろな話題を集めています。
例えば、このテストステロンの値を測ると、男性の寿命が分かる可能性があるなど(院長のコラム~自分の寿命が分かる時代が来たかも!~をご覧下さい)
さて今回はこのホルモンと男性の心臓の働きの話題です。
男性の心臓が悪い人に、このテストステロンを投与すると、心臓の働きが良くなるそうです。
これは、このホルモンが心臓の筋肉の合成と強化を行い、血管を拡張する能力があるためではないかと考えられています。
この研究には、女性の更年期障害の時に用いられる、女性ホルモンの入った貼付剤と同様、テストステロンが入った貼付剤を用いたそうです。
女性用のホルモンの入った薬剤は日本では、貼付剤の他、ぬり薬など使い易さを考え、いろいろな薬剤が販売されています。
この研究がさらに進み、本当に心臓の働きに良い成分だけが薬品として完成し、しかも貼り薬や、ぬり薬の形で使えるようになると良いですね。
なお男性ホルモンは瞬間の判断が必要な仕事の前に用いると判断力が上がるという研究があります。
その例として株の売買があげられていました。
小児の知能や運動能力が上がった
世界で信頼されている医学誌 JAMA(2010年)に、妊娠中のお母さんは、葉酸と鉄分を十分にとると、出生後赤ちゃんの知能や運動能力が良くなる可能性があるという調査結果が出ていました。
今回の調査は、栄養状態のあまり良くないと考えられるネパールの農村で行われました。
妊婦さん達に、いろいろな栄養素を組み合わせて飲んでもらい、生まれた赤ちゃんにどんな影響が出たかを調べたものです。
なお選ばれた栄養素は、いずれも妊娠中に必要と考えられたものばかりで、不必要と考えられる要素は入っていなかったようです。
これらの栄養素は、サプリメントの形で、妊娠初期から産後3ヶ月迄毎日摂取してもらったそうです。
その結果、試験期間中に生まれ7-9歳になった676人の子供を調べた所、鉄と葉酸を選択して十分食べたお母さんから生まれた子供のいろいろな能力が上がったそうです。
詳しく言うと
1.小児の知能(記憶力と推論する能力)
2.物事を処理する能力
3.バランスの良い器用さ-運動能力
等が上昇したそうです。
妊娠中や出生直後は、赤ちゃんの脳の発達と特に関係する時期と考えられています。
この時期、特に鉄分は脳神経の発育に影響する可能性があるそうです。
これらの点を考えると妊娠中の葉酸と鉄分の十分な摂取は、大切と考えられそうです。
我が国では妊娠中の女性にインフルエンザワクチンを投与して良いのか、まだ議論があります
しかし国によっては、妊娠中に積極的にインフルエンザワクチンを投与する所もあるようです
例えば、ドイツではワクチンの接種が公費で負担され無料です。
ドイツに限らず、妊娠中にインフルエンザワクチンを投与すべきと考えている国は幾つかあります。
その目的は勿論、インフルエンザ感染に弱い母体の保護のためです。
ところが最近、とても興味深い調査結果が出てきました。
妊娠中にインフルエンザ予防ワクチンをうけると、ワクチンを受けた母体に効果があるだけでなく、お腹の中の赤ちゃんにもインフルエンザ予防効果があるのだそうです。
もともと生まれて6ヶ月以内の赤ちゃんは、インフルエンザにかかりにくい事が分かっています。これは母乳の中に、インフルエンザを予防する成分が入っている事と、お母さんのお腹の中にいる時に、胎盤を通って、インフルエンザ感染に強い体質が伝えられているからです。
しかし、1度インフルエンザが流行すると、インフルエンザの感染率や死亡率は、出生後6ヶ月未満の赤ちゃんの方が、6ヶ月以上の赤ちゃんより高くなるとの事が知られています。
さて、妊娠中にお母さんがインフルエンザの予防注射を受けると、生まれた赤ちゃんのインフルエンザ感染率が減り、入院率も減ったとの事です(インフルエンザ流行期でも)。
また赤ちゃんの持っているインフルエンザの抵抗力(抗体価といいます)も、予防注射をうけたお母さんから生まれた子の方が髙かったそうです。
日本でも将来、妊娠中のインフルエンザ投与の効果について議論が出てくる可能性があるでしょう。
前立腺がん、卵巣がん、子宮体がん、乳がん
睡眠時間と関係するがんがあるらしい事が分かってきました。
睡眠時間と健康にはいろいろな調査や研究があります。
その中で分かってきたのは、その人に適当な睡眠時間には個人差があるとの事です。ただ睡眠時間が極端に短いと、健康に良くないという考えが多いのは言うまでもありません。
今のところ健康に害があるのは、5時間以下とか6時間以下との説があります。
さて睡眠時間が長くなると、メラトニン分泌時間が長くなります。
このメラトニンというのは睡眠と関係する物質です。
このメラトニンの効果の1つに、十分に出ると性腺刺激ホルモン(男性や女性の性腺を刺激します)の働きを抑える作用があります。
その結果、性ホルモンが関係するがんの発生が少なくなる可能性があるという考えがあります。
女性では 乳がん、子宮体がん、卵巣がん など、
男性では 前立腺がん など。
メラトニンのもう1つの効果は、がん細胞の成長を抑える効果があるという事です。
さて、このメラトニン-睡眠時間と前立腺がんの関係を調べた研究があります。
これによると、2万人以上の人を追跡し、睡眠時間と前立腺がんの発生を調べた所、睡眠時間が9時間以上の人は、前立腺がんの発生率が低く、6時間以下の人は発生率が高くなるという結果が出たそうです。
なお睡眠時間があまり短いと免疫力が落ちるという研究もあります。睡眠時間とがんの関係については単にメラトニンだけではないかも知れません。
そう言えばナポレオンは、胃がんだったという説がありますね。
睡眠時間が3時間だったというナポレオンは、メラトニンの分泌が少なく、胃がんになり易かったのかも知れません。
寝不足は乳がんになる確率が上がる?
睡眠不足は身体のいろいろな機能に影響を与えます。
免疫力等、病気に対する抵抗力を低下させる可能性もあると考えられています。
2009年日本疫学会(疫学というのは一言で言えば病気の原因をいろいろな角度から研究する学問をいいます)では、睡眠時間が少ないと、乳がんになるリスクが高まるのではないかという研究の結果が出ていました(東北大学-柿崎真沙子氏ら)。
平均睡眠時間が6時間以下の女性は、睡眠時間がそれ以上の人に比べると、1.62倍危険率が高まるというものです。
これには催眠物質であるメラトニンが関係している可能性があるそうです。
メラトニンが十分に出る(睡眠が十分にとれる)と、乳がんの発生と関係する女性ホルモンの分泌が減るという考えと、メラトニン自体ががん細胞の成長を抑えるという考えがあるようです。
これは前回お話した前立腺がんの研究とほぼ同じ傾向と言えるでしょう。
がんに対する研究はいろいろな角度から進められています。その研究の広がりはとても一口では言い切れません。
日本の統計をみると、国民の2人に1人は一生のうちに1回は、何らかのがんに患かります。そして3人に1人はがんで亡くなっています。がんに対する研究が1日も早く、そして一歩でも進む事を祈りたいものです。
さて、がんをやっつける対策はいろいろな方面で進められています。
今回も注目すべき研究の結果が出ていました。
カンジタ症という真菌(カビの一種です)に効く薬(抗真菌剤といいます)に強い抗がん作用があるというものです。
ドイツの大学の先生の研究結果ですが、もしこれが本当なら、がんではない正常の細胞に悪い影響を与えずに(副作用が出ずに)がんに効果がありそうです。
ただ、今の所どのがんにどの程度効くか、効果のある量はどの位か、他の病院で試したら、やはり同じ程度の効果が出たか等については、まだ次の情報が出ていません。
抗真菌剤を長く用いて、もし真菌に感染した時に今度はその真菌剤が効くかの問題もあります。
しかし、とても重要な情報に違いはありません。
さらに一層の研究が待たれています。
最近は、男性が女性にとてもやさしくなっています。奥さんが陣痛で苦しんでいると、医者や助産師に「何とかできないの」と言う人が増えてきました。
これは夫立ち合い分娩が増え、陣痛を目の当りにするとビックリする為もあるかも知れません。
大部分のお母さん方は、十分陣痛に耐えていますし、分娩後はその痛みを逆に赤ちゃんへの愛情に変える本能をもっています。
お産の体験をつづった先輩達の本には、
1 赤ちゃんが生まれた瞬間、痛みなんてふきとんだ。
2 すぐ次の赤ちゃんの事を考えた
など前向きの意見が並んでいます。
さて陣痛が強くても耐えた方が良い理由があるそうです。
10年位前の研究データに、強い陣痛に耐えたお母さんから生まれた赤ちゃんは、成人になってからストレスに強いというのがありました。
もしそれが本当なら、結果的に帝王切開になっても、ある程度陣痛を経験するという事は意義があるという事になります。
陣痛が強くてつらいお母さん、陣痛がつらいのではと心配なお母さん、そして奥さんの陣痛を前にして、悩んでいるお父さん、その陣痛は、実は赤ちゃんの為に役に立っている可能性もあるかも知れないのです。
但し陣痛は、ただ耐えて下さいというものではありません。産科医や助産師さんからこの陣痛のお蔭で赤ちゃんがどの位下がってきたか、お産がどの位進行してきたかを聞く事も大切です。
これらの事は、何よりお母さん達の励みになるでしょう。
最近外来に月経前のイライラ感、うつ気分など、月経前症と言われる症状を訴えてくる人が増えてきている様です。
月経前症(PMS)という言葉も広く認知されている様で、予め「私はPMSだと思います」という方も珍しくはなくなりました。
今の所このPMSに対する治療の仕方に2つの流れがあります。
1つはピルを用いる方法、1つは脳内の神経伝達物質を増やす方法(安定剤の中などに含まれます)です。
ところで薬に頼らずに、何とかこのPMSを改善する方法はないでしょうか。
今の所すぐに効果を表す方法はなさそうですが、改善のカギの1つに日頃の食事というのがあるそうです。
日頃忙しくて、食事の内容が偏ったりしていないでしょうか。ついコンビニでの食品に頼っている事はありませんか。そして体重の増加がいやでダイエットに気を使う事はありませんか。
食事をしたり、人からほめられたりして嬉しいと思う気分になった時に、脳の中でグルタミン酸が活躍するというデータがあります。
ずっーと昔にはグルタミン酸に脳の働きを良くする作用があるという事で、コーヒーの中にも旨味調味料を入れる事が流行した事がありました(ほんの一時、そして一部の人達だけでしたが)。
この旨味の成分がグルタミン酸です。
最近はこのグルタミン酸が脳の感情に重大な役割を果たすのではないかという考えがあります。
PMSに対する効果も期待されています。
さてその為には、
1 コンビニ等で出来合いだけの食品に頼らない事。
2 もう1つ、1品でも2品でも自分で美味しいと思う食べ物を作ってみる事、などがすすめられ始めているとの事です。
食べ物からでなければ摂取できない栄養素に「コリン」があります
身体の中では神経伝達物質である「アセチルコリン」や「レシチン」の構成成分です。
この「コリン」が女性のかかる癌で最も多い乳がんの発生を抑える作用があるのだそうです。
この「コリン」の適切な摂取量は女性で1日425㎎だとか(妊娠中は450㎎)。
卵1個にコリン125.5㎎入っているそうです。
この他コーヒー、大豆、レバー、カリフラワー、小麦の胚芽などに「コリン」が多い事が知られています。
このうちカリフラワーは「癌」全体の予防効果がある事が知られています。
またコーヒーは心臓血管の病気や癌の予防になるとか。適切な量の食事をバランスよく食べる事が大切なようです。
なお卵の事であと少し追加を。
身体中にあるリン脂質ホスファチジルコリン(レシチン)は血管の中をきれいにする作用があります。
このため心臓や脳の血管の老化を防ぎ、心臓の病気の予防や認知能力の低下を防ぐ作用があります。
またビタミンEも豊富。
このビタミンは老化を防ぐ事で知られています。
卵類の食べ過ぎはコレステロールの増加と関係するという事で嫌がる人も多いようですが、適切な量であれば健康に良いという事になります。